・チェコアニメのすすめ トルンカ-手-編~
今回は同じくチェコアニメの巨匠 イジー・トルンカ(1912~69)を
彼の遺作で「手」というパペットアニメの作品があります 個人的には一番好きな彼の作品なんですが 簡単にあらすじを・・・
アルルカンという花を愛する若者が、ある日突然空からの「手」により 手の彫刻を作ることを強要される 嫌がるアルルカンをその「手」は籠に入れ、操り人形のように糸で吊し 自由を奪う アルルカンは手を作り続ける 完成後開放され家に帰ったアルルカンに 花の植木鉢が落ちてくる あっけなく死んでしまうアルルカン すると「手」がテキパキといつものように葬儀の支度をし、月桂樹の冠を捧げる
この作品、ファンタジー色の強いトルンカにしては暗示的でメッセージ色が強い そのため公開後すぐに上映禁止になる
明らかにこの「手」は社会主義(全体主義)の支配者の手で、アルルカンはその労働力としての 駒の1つにすぎず、労働力が尽きると月桂樹の冠(形だけの名声)で なんの報いもない という社会主義(全体主義)への批判を表している もう少し深く見ていくと抑圧されてきた芸術家として アルルカンを自分に見立てた作品でもある 自由なもの作りや思想を奪われる怒り、いつどこからともなく現れる圧力や権力 などへの怒りなど様々な感情が表現されている
トルンカ スタジオという映画制作スタジオにトルンカに影響を受け 弟子入りした人形作家 川本喜八郎さんがトルンカの足跡をたどるという NHK「世界わが心の旅/チェコ・人形の魂を求めて」という番組があった (CHIKAさんビデオありがとう) 「トルンカは人生そのものを愛し、生活の中の平穏さ、心地よさ調和というものを信じ、 そういうものに対しての圧力や人間をみじめにするものに対して闘った」 と当時のスタッフから聞く またそこで「手」の次に作る予定だった作品があったことを知る
それはクリスマスの合唱曲を映像化すること 雪深いチェコを舞台にキリストの生誕を祝う人々の喜び 世界が安らぎと調和に満ち、人々は未来に希望を持ち力強く生きていく
「手」という救いようのない悲しい作品で作家生命を終わらせなかった事を知り 少し嬉しくなった
-「手」より-
|